夢と消えた自動折り畳みロボット、ランドロイドに想いを馳せる

世界初、衣類の全自動折り畳みロボット「ランドロイド」の開発・販売を目指していたセブンドリーマーズが破産した、というニュースが飛び込んできました。

人類を洗濯モノを畳む家事から解放する」という狙いに、人とロボットが共生している世界感が浮かんできて、すごい未来感がありました。期待していたのですが、とても残念です。



目次

ランドロイドとは?

ランドロイドは、人工知能、画像認識、ロボットアームを駆使して、乾いた洗濯モノをロボットアームでつかみ上げて、種類を認識し、最適な方法で畳んで、仕分けるという作業を完全自動化することを狙っていました。

当初は、2017年度の発売を目指していましたが、開発が遅れてしまい収益化できず、2019年4月、ついに約32億円の負債を抱えてしまい、事業継続を断念したという事です。

パナソニック、ダイワハウスをはじめ、外部から100億円程度の出資を受けていたので、総額では130億円以上の開発コストを使い切ってしまったことになります。

果たして、何があったのでしょうか?

なぜ、破綻に至ったのか?

日経ビジネスの記事に、同社を率いていた阪根社長のコメントが掲載されています。

では、開発を難航させたものは何だったのか。
私はひとまず発売すればいいと思うんですが……」。1年余り前、阪根社長は日経ビジネスの取材に応じ、そう漏らした。ロボットアームの開発に苦戦しているという。アームは様々な種類の布を持ち上げられるが、どうしてもつかめない素材があるとのことだった。

それが、カジュアル衣料品店「ユニクロ」の人気商品「AIRism(エアリズム)」だった。シルクのような肌触りが特徴だが、それだけにロボットアームが扱うのが難しかった。完全な製品を世に出したいと考えるパナソニックは、この点を重く受け止め、発売に難色を示したという。破産手続きの開始を受けて、「ランドロイドの事業は解散する」(セブン・ドリーマーズ広報)。

参考)日経ビジネス:畳めなかったエアリズム 全自動折り畳み機、事業解散へ

このコメントだけをみると、エアリズムがつかめず畳めなかったから開発が完了しなかった、という印象を受けます。出資者であるパナソニックの完璧主義大企業体質が、事業解散の原因だったのでしょうか?



パナソニックとの方向性の違い?

完璧な商品を世に出したい」という言い回しで、ひとつ思い出したエピソードがあります。いまでは、存在が当たり前になった「ロボット掃除機」です。

業界のリーダーはルンバを発売するiRobot社です。同社は米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)のロボット研究者達が1990年に創業したロボット専業メーカーです。

最初のルンバの試作品は1997年、初代の発売は2002年でした。

当時、日本の家電メーカーは世界でもまだ競争力があり、掃除機はもちろん、ロボットを駆動させる基礎技術はあった、はずです。しかし、日本勢はロボット掃除機の開発では完全に出し抜かれました。それはなぜか?

ロボット掃除機が階段から落ちて下にいた人が怪我したらどうするんだ?

仏壇のロウソクを倒して、火事を起こしたら誰が責任をとるんだ?

こういう「リスク回避思考」に加えて、「すべての顧客層に満足してもらう完璧な製品」じゃないと世に出せない、という発想が、日本企業が尖がった製品を世に生み出せない要因だと、指摘されてきました。なぜ日本からiPhoneは生まれなかったか、と同じ文脈ですね。

では「ひとまず発売してみる」はできたのか?

ランドロイドは尖がった製品なんだから、完璧じゃなくても、まず発売して、それからどんどん改善していけばいい。だから阪根社長のいうように「とりあえず発売してみる」をやるべきだったのか?というと、どうもそう単純でもなさそうです。



そもそも課題解決へのアプローチが悪かった?

日経ビジネスの記事では、ユニクロのエアリズムがやり玉に挙げられていますが、世の中にはそれ以外にもツルツルの素材の服はたくさんありますし、今後新たに発売される可能性だってあります。

そのため、ランドロイドの様に家庭内で長期間に渡っての毎日の稼働が求められるロボットには、未知の衣類にも対応できる「汎用性」と故障や不具合が少ない「耐久性」が求められます。

パナソニックはこれまで無数の家電製品を世に出し、時にはリコールなど痛い思いもたくさん経験してきています。そのパナソニックの目からみてもこの「汎用性」と「耐久性」が合格レベルに達していなかった、という結論だったということではないでしょうか。

パナソニックだって社名を出して出資をしている以上、できれば発売までもっていきたかったはずです。出資金を失うのは当然として、これまで支援してきた労力と時間が結果につながらず、更に株主の批判にも晒されるからです。それでも撤退するという判断に至ったには相当な理由があったと考えるのが自然でしょう。

僕は、洗濯モノを畳むという課題に対して、ロボットアームを使うという解決アプローチ自体が、そもそもスジが悪かったのではないか、と感じています。

食器洗いと食洗器の違い

課題に対する解決アプローチの良し悪しを検証するために、洗濯モノ畳みと同様にめんどくさい家事である「食器洗い」を取り上げてみましょう。

人間の食器洗い(すべて人力)

人間が食器を洗うという家事を完結させるには、以下のプロセスが必要です。

  1. 食器を一か所に集める
  2. スポンジに洗剤を付けて泡立てる
  3. 食器をつかむ
  4. 食器をつかんだまま、別の手で洗い汚れを落とす(裏・表)
  5. 水でゆすぐ
  6. 汚れが落ちたかチェックする
  7. 水切り場に立てかける
  8. 3~7までをなくなるまで繰り返す(たまに2もする)

食器の形状や材質も異なるので、持ち方や力の入れ方もすべて異なります。また、洗剤でツルツル滑るお皿を持ち替えながら保持し続けるという高度な運動制御も求められます。

加えて、限られた湯切り場のスペースに乾きやすい様にお皿を積んでいくという作業も、実はかなり高度な判断力と運動制御能力が求められます。人間ってすごい!

食洗器の食器洗い(半自動化)

一方、半自動化された食洗器を使う場合には、どうなるでしょう。

  1. 食器を食洗器に入れる
  2. 専用の洗剤を入れる
  3. スタートボタンを押す

以上…ですね。なお、食洗器では洗えない漆器や箸などは、当然ながら別に手洗いする必要があります。

機種によっては食器の乾燥までできるので、終わったらそのまま食器が利用できます。

僕の知人の共働き夫婦は、日常で使う食器を限定し、食洗器に収まる食器だけで生活しています。もはや食器棚にしまう作業も不要な、非常に効率的な生活スタイルだと感心してます。



ランドロイドは、人間になりたかった?

さて、ランドロイドは「人間による食器洗い」と「半自動化した食洗器」のどちらのアプローチをとったか、といえば、前者の「人間の動作を再現しよう」としたと言えます。

ただこのアプローチは、既に述べたように茨(いばら)の道です。人間が五感を駆使して複雑な判断と運動制御を絶えず繰り返して実現している作業を、画像認識したAIとロボットアームでの完全再現を目指す訳ですから。

考え方によっては、これって自動車の自動運転Level.4よりも難しいかもしれませんね…。自動運転は車のサイズやスペック、外部環境の変数をある程度特定できますが、どんな素材の衣類が何がどんな風に絡まって入ってくるかは、無限のパターンがありますし、再現性がないですからね。(まったく同じ衣類が絡まった状態は再現テストできないし、コンピュータシミュレーションも難しい)

そもそも自動車産業の様な多額の投資や、同業者間のコラボレーションもないという孤独な闘いを強いられますし。

更に、このロボットアームの一部でも故障したら、「畳む」という全機能を失ってしまいます。この点で耐久性でも課題があったと推測できます。

モラベックのパラドックス

人口知能やロボット工学に「モラベックのパラドックス」という言葉があります。

高度な推論よりも感覚運動スキルの方が多くの計算資源を要する

モラベックは「コンピュータに知能テストを受けさせたりチェッカーをプレイさせたりするよりも、1歳児レベルの知覚と運動のスキルを与える方が遥かに難しいか、あるいは不可能である」と記している

要は、工作機械が自動車の溶接をハイスピードで処理することより、赤ちゃんが自然にやっている離乳食の豆腐をスプーンですくって、こぼさないように口に運ぶ(同時に苦手なニンジンは食べない(笑))方が、遥かに難しいという事です。

ランドロイドは、更に高難度の「嫌いなニンジン(エアリズム)も含めて、何とか美味しく食べさせる」という壮大な課題に挑んだ結果、残念ながら壁にぶつかり、開発を断念することになったと言えると思います。



あるべき開発の方向性は?

それでは、ランドロイドはどのような課題解決アプローチをとるべきだったのでしょうか?それは食洗器と同様に用途を限定した「半自動化アプローチ」だと思います。

人間が衣類をセットするところまでは行い、畳むという作業のみをロボットが行うのです。掴むのが苦手なエアリズムは、そもそも相手にしないという割り切りです。

またそもそも、服を畳むという機能だけを考えれば、ロボットアームはやりすぎ、オーバースペックです。

例えば、下の画像の様に、誰でも同じサイズにキレイに畳める「洋服折り畳みボード」なるものもお片付けグッツとして売ってます。

最初に決められた位置に洋服を置けば、あとはパタパタと折り返していくだけで、洋服がキレイに畳めるというアイディアグッツですね。

高度な技術を使ってロボットアームで洋服を一枚一枚畳まなくても、洋服をこのボードの上に置いて順番通りにパタパタできれば、むしろキレイに速く畳めるのはわずか1300円のこのボードかもしれません。

洗濯畳み界のルンバ、FoldiMate

こうやって色々と考えてくると以前、僕が「これほしい!」と思わず記事にしてしまったFoldimateが、正に洗濯畳み界のルンバ、「食洗器」的アプローチの製品だったんだなー、と再認識できます。

参照)これは凄い、めっちゃ欲しい!自動折り畳みマシーン「FoldiMate」の登場!

シャツ、ズボン、タオルなど衣類の種類は限定されますが、圧倒的なスピードがガンガン畳んでくれるこのマシーン。完全自動じゃなくたっていい、半自動でも「人間が便利に使える道具」というアプローチが実用的だし、現実的なんだろうと思います。

火のついたロウソクがある仏壇のある部屋では、ルンバは使わない!FoldiMateが畳めない、2mのカーテンや、靴下なんて投入しない、それは人間が判断すればいいんです。



それでも日本人は人型ロボットの夢をみるか?

セブンドリーマーズが破綻したというニュースから、後付けで判ってた風な批判記事みたいになっていますが、違うんです。少なくても僕はランドロイドの先に、人とロボットが共生している世界観万能ロボットの可能性を感じ、応援していました。

手塚治虫の「火の鳥」に出てくるロビタの様な、人に寄り添い、本当に助けてくれるロボットの登場を!

鉄腕アトムやドラえもんの影響もあって、僕も含めて日本人はどうも「人型ロボット」にこだわってしまう傾向がありますね。

人型をベースにロボットを考えてしまう発想、これはこのランドロイドにもロボットアームという形で現れていました。

冷静に考えてみれば、タンスの様なでっかい黒い箱の中で、2本のロボットアームが洗濯モノを畳んでいるって、テクノロジーの無駄使いというか、かなりシュールな絵ですよね?(笑)

でも、このチャレンジこそ「人とロボットが共生する世界」につながる可能性があったんです。

だって、洗濯物が完璧に畳めるレベルのロボットアームなら、料理や介護など他の家事や、人間の支援だってできそうじゃないですか!

セブンドリーマーズに投資した人達も、意識的か無意識かはさておき、この未来への期待感をもって支援したんじゃないかなぁ、と想像しています。

ランドロイドは残念でしたが、開発プロジェクトに関わった人達には、この経験を次ぎに生かして欲しいなと、また違う形でのリベンジを期待しています。

参照)これは凄い、めっちゃ欲しい!自動折り畳みマシーン「FoldiMate」の登場!

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