ついにこの季節がやってきました。国際コインランドリーEXPO 2018です。
今年は9月12日(水)~14日(金)の3日間の開催でした。
事前に書いた記事(今年は9/12 – 9/14の平日開催!国際コインランドリーEXPO 2018が楽しみだ!)では3日間の気になるセミナーをご紹介しました。
残念ながら、サラリーマンが本業の僕が有休が取って参加できるのは1日だけ。どの日に行くべきかと熟慮した結果、やっぱり初日の12日でしょ!ってことで行ってきましたよ、東京ビックサイト!
アメリカのコインランドリービジネスの現状と今後の展望
アメリカのコインランドリー協会会長であるブライアン・ウォレス氏が来日しての講演。アメリカのコインランドリー市場の過去と現在、そして未来を紹介してくれました。
規模が違うぜ!Laundromat in USA!
現在のアメリカのコインランドリー店舗数は29,500店也。
おやっ?日本でも既に20,000店くらいになっているから、国土の広さ(約25.5倍)や人口規模(約2.5倍)から考えると、意外に店舗数は大したことないのでは??
いやいや、単純に店舗の「数」で比較してはいけないのです。ポイントは「規模」ですよ、規模!
アメリカのコインランドリー店舗の広さは平均3,000平方フィート(約270㎡ = 約82坪)で、機械はなんと60台くらい設置されているのが標準的な店舗構成だそうな。270㎡ってどんなもんかというと、ダブルスのテニスコートのエリアがちょうど260㎡くらいなので、イメージの参考になるかと。
僕の店は10坪くらいの小型店なので、ざっと8倍の大きさですねー。うん、でかい!それに60台の機械の掃除と集金って一体何時間掛かるんだよ、というレベル。
そして驚いたのが、平均年間売上が20万ドル、つまり2240万円/年とのこと(1ドル112円換算)月に換算すると187万円/月という、日本の繁盛店の基準で良く引き合いに出される100万円/月を軽く超えるとんでもない金額になります。しかもこれが平均ですからね。
そして思わずメモしてしまった事実は、アメリカのコインランドリー業界にはフランチャイズは存在せず、ほぼすべて個人事業です、という会長の発言。やはりコインランドリーには、全国レベルのブランドパワーやフランチャイズじゃないと得られない運用ノウハウはない、という事なのでしょうね。(参考:それいけ、コインランドリー経営!機械はアクア(AQUA)に決めちゃいました)
アメリカのコインランドリー市場の特徴
アメリカのコインランドリー利用者は、低~中所得者層がメインセグメントになりますが、現在この層の人口が、アメリカで増え続けているそうです。会長曰く「潜在顧客はこれまでで一番多い」とのこと。
こういう市場環境を受けて業界の設備投資も活発化しており、機械も高性能で大容量化し、それらを大量に並べた超大型店も出始めているとのこと。
超大型店の広さは何と10,000平方フィート(約930㎡ = 約282坪)にもなります。これは大人のバスケットボールコート(420㎡)の2.2面分、広い体育館くらいの大きさのコインランドリー店舗って事ですね。
巨大な機械がずらーっとならぶアメリカのコインランドリー店、自分の洗濯モノをどこに入れたか忘れそう…
壁一面が乾燥機、広々としてますねー。
家庭用の5~10回分の洗濯モノを1回で洗える45 kgの大型洗濯機、乾燥機は35 kgサイズが普及モデルになってきているということ。こんな巨大サイズの機械を僕の店に置いたら2台で終了ですわ、まじで。
店舗の大規模化と機械の大容量化に加えて、クレジットや電子マネー決済、IoTを活用したスマホ連携や、洗濯代行ワンストップサービス(Wash & Fold)+配達までやってくれるサービスも出始めているとのこと。これに関しては日本の時短や利便性を上げようとしているトレンドとも同じ流れですね。
また、コインランドリー業界の高い成長ポテンシャルが金融業界に広まったことで、投資家の参入も増えているそうです。
業界としては明るいニュースですが、既存のプレイヤーにとっては、機械やサービスを継続的に向上させていかないと生き残るには厳しい時代になるかもしれませんね。
アメリカのコインランドリー顧客プロファイル
会長が「潜在顧客はこれまでで一番多い」と言っていた顧客プロファイルが紹介されていました。
比較軸 | 内容 |
居住形態 | 賃貸(65%) |
利用頻度 | 週1回(45%) |
ランドリーまでの距離 | 平均約1.6 km |
月額使用金額 | 5,600円 |
自宅に乾燥機を設置できない賃貸住まいの方が、仕事が休みの日に、溜まった洗濯モノを車で近くのコインランドリーに運んで、一気に洗濯&乾燥するっていうのが一般的な生活スタイルの様です。
ちなみに、アメリカでは洗濯モノを外に干すという習慣がありません。洗濯モノを外に干すと、乾燥機が買えない貧困な家庭というイメージを持たれるとのこと。なので地域によっては防犯や景観上の問題から、外干しが禁止されているそうです。
日本人はマンションでもガンガン外干ししますが、アメリカ人旅行者からは、お金のない可哀そうな人達と思われているのかもしれないですね(笑)
それにしても洗濯に月5,600円の出費というのは、決して安くはない額だと思います。少なくても洗濯事情に関しては、アメリカに住むって大変ですね。
試しにネットでアメリカのコインランドリー事情を調べてみると、どうやら地域によってはボッタくり価格で運営している店もあるようです。フランチャイズではない個人経営なので、「どうせウチで洗うしかなんだろ?」と利用者の足元を見てやりたい放題なのかもしれませんね。
フランチャイズだったら、ブランドイメージを維持しないといけないのであまりエゲツない経営はできませんが、個人経営であれば自由ですから。
日本市場との違いとまとめ
日本で主流になりつつある全自動洗濯乾燥機、つまり洗濯から乾燥まで1台で対応できる機械はアメリカではほぼ存在せず、それぞれの洗濯と乾燥で別々の専用機とのこと。また、洗剤の自動投入もあまり一般的ではなく、お客さんがそれぞれが自分の好きな洗剤を持ち込んで洗うだそうな。
まぁ、多様な移民の国アメリカでは、洗剤選びにもいろんな価値観があるでしょうから、勝手にどれか一種類に決めちゃって自動投入しときました!なんてできないんでしょうね。
この洗濯は洗濯、乾燥は乾燥、洗剤は持ち込み、という割り切りは、シンプルでいいですね。
外干しができずに、コインランドリー利用がほぼ義務であるアメリカと違って、日本では外干しは一部のマンションを除けば自由です。日本では自宅で無料で洗濯&乾燥できる環境がある中で、あえてコインランドリーを選んでもらうには、それだけの付加価値の提供が必要です。
その一つの答えが、全自動洗濯乾燥機+洗剤自動投入という利便性なんでしょうね。
アメリカの労働者人口は、リーマンショック後に一度落ち込んだものの、その後は徐々に増え続けていますが、日本は逆に労働人口の減少と少子高齢化が加速していきます。
市場環境が違えば、当然ニーズも違う訳で、これからの日本のコインランドリー市場では、機械の性能や機能の強化の方向性、IoTシステム連携、代行などの関連サービス、異業種コラボも、アメリカとは異なる独自の発展をしそうな予感がします。
会長の講演は、「日本市場の発展や技術的イノベーションは、世界のコインランドリー業界の発展によい影響を与えてくれるため大いに歓迎する」という前向きなコメントで、幕を閉じました。
アメリカ市場を知ることで、かえって日本市場の特徴も浮き彫りになった、そんな有意義な時間でした。
さて、長くなってきたので、他のセミナーや展示会のレポートは次回に!
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