コインランドリー2店舗目の出店をめざして物件探しをしています。
さて、前回は候補地②に融資特約付きの買付証明を提出して、銀行に融資を申し込んだところまで報告しました。
今回の物件購入と開業資金は、すべて銀行からの融資で賄いたいと考えています。割高なテナント家賃を払いながらコインランドリー機器を7年リースで調達するより、この超低金利な状況を最大活用して銀行から長期の事業ローンでまとめてしまった方が、毎月の返済額を低くでき、キャッシュフローが改善するからです。
既にコインランドリーを1店舗を経営し、累積黒字化できているという実績を前面に出して、全額ローンを目指します。っていうか、恥ずかしながら手持ち資金があまりないので、銀行融資が前提です。
ちなみに、融資を勝ち取るための事業計画上はもう一つある「秘策」があります。
さぁ果たして、夢のコインランドリー多店舗展開はできるのでしょうか!?
コインランドリーの事業性
コインランドリーとしての立地条件はランクB以上で、かなり有望だと考えています。
- 駅徒歩4分、生活道路(バス路線)に面している
- 目の前に60世帯くらいの分譲マンション(大手デベロッパー)
- 近隣は住宅街で廊下に洗濯機のような古いアパートがあり見込み客が存在する
- 見晴らしのよい交差点の角地
- 交差点の対角線上はコンビニ
- 半径300m以内に競合店はいない
- 想定売上は53万円/月(636万円/年)で採算性あり
地味に気に入っているのは、交差点の角地で土地の周りに空間があること。コインランドリーは乾燥機がつながったダクトを店の外に設置するのですが、そこから熱風が噴き出します。お客さんが自分で柔軟剤(ダウニーとか)を入れると、独特のニオイもそのダクトからでてきます。
店の周りに十分な空間がないと、この熱風とニオイがトラブルになるリスクが高まってしまいます。その点、この場所は前後が道路なのでトラブルのリスクがかなり低くなります。
風通しが良い上に、車の流れで空気が拡散されるので、ニオイについてはまったく問題なさそうです。
事業計画上の秘策
融資を勝ち取るための「秘策」ですが、そんなもったいぶるほどのものではなく、結論からいえば店舗賃貸併用にするというアイディアです。賃貸併用のアイディアとしては以下のパータンを考えました。
- 普通の賃貸物件
- 家具付きのマンスリーマンション
- 簡易宿所(民泊)
- シェアハウス
順当にいけば普通の賃貸物件なんですけど、それではつまらない(笑)それにシェアハウス、民泊とマンスリーマンションを組み合わせた方が収益を最大化できます。また、短期利用であれば、交差点からの騒音や、コインランドリーからの振動やニオイなどの住居としてのマイナス面もそれほど重要視されないと思います。
むしろ民泊やシェアハウスの場合には、多少騒いでも周りからクレームがこない、という方がメリットになるでしょう。コインランドリーの利用者が「2階がうるさい」とクレームしてくることはありえませんから(笑)
また、1階がコインランドリーというのは、旅行中の洗濯物を手間なく片付けることができるので、滞在者にとっても非常に魅力的な設備となります。
そこで認定をとっての簡易宿所での収益シミュレーションをしてみることにしました。
賃貸、マンスリー、民泊、簡易宿所のメリット・デメリット
普通の賃貸やマンスリーマンションの場合には、「賃貸借契約」として物件そのものを貸し出します。一方の民泊や簡易宿所の場合には、「宿泊契約」で部屋に泊まれる権利を契約します。
普通の賃貸借契約は、説明不要だと思うので、民泊と簡易宿所について簡単にまとめておきます。
民泊(家主不在型) | 簡易宿所 | |
関連法規 | 民泊新法 | 旅館業法 |
許認可 | 認定制 | 許可制 |
年間営業日数 | 180日以内 | 制限なし |
1人当たりの床面積 | 制限なし | 3.3㎡以上 |
フロントの設置義務 | なし | 原則なし(市区町村依存) |
苦情問い合わせ先 | 住宅宿泊管理事業者 | オーナー |
民泊のポイントは、年間180日以内という営業制限と、住宅宿泊管理事業者との契約が必須ということでしょうか。まず180日の営業制限ですが、年間の半分は稼働できないので収益を追求するには大きな制約になります。
家主不在型の民泊をする場合には、住宅宿泊管理事業者に、住宅の管理・運営を委託することが義務付けられています。まぁ実際、家主同居型で全部自分で管理するパターンじゃなければ、誰かに委託する必要がある訳で、その役割と責任が明確に規定されている住宅宿泊管理事業者が存在した方が、安心かもしれません。
簡易宿所は旅館業法で規定されている営業形態の一つで、旅館・ホテルの規模に達しない宿泊を提供するレベルの施設です。民宿、ペンション、カプセルホテル、部活で使う合宿施設などが該当します。法律に則った非常照明や消防設備の設置が必要など民泊よりもハードルは高いですが、年間180日以内の規制がないので、収益性は高くなります。
賃貸アパート | マンスリー | 民泊(家主不在) | 簡易宿所 | |
実現難易度 | Low | Low | Mid | High |
収益性 | Low | Low | Mid | High |
経営リスク | Low | Low | High | Mid |
ランドリー相性 | Low | Mid | High | High |
それぞれのオプションをまとめてみました。比較項目によってHighとLowの意味が逆になるので、ポジティブは緑、ネガティブは赤で色分けしています。こうやって見てみると、簡易宿所は、最初のハードルこそ高いですが、実現できてしまえば、未来が明るそうです。
民泊新法が施行されたあと、かえって簡易宿所の登録件数が増加したというニュースがありましたが、収益性を考えれば当然の結果なのかもしれまんせんね。
簡易宿所の売上シミューション
簡易宿所が良さそうだということで、知り合いの建築士に簡単な図面を書いてもらいました。
各部屋25㎡程度で、宿泊定員は3名です。備え付けのベットは2つで1つはソファーベットにしています。簡単なキッチンとトイレとお風呂ば別で設置しているので、最低限の設備はカバーしているかと。1階はコインランドリー店舗として、2階と3階がこの同じ間取りとなり、合計4部屋、収容人数12名の簡易宿所のプランです。
建築費は重量鉄骨造3階建て4,300万円の見積もりがとれました。土地代金、コインランドリー機器、その他諸経費を含めてざっくり総額1億円の投資物件としておきましょう。
こちらの間取りでネットで見つけた住宅宿泊管理事業者に、売上シミュレーションをしてもらいました。宿泊料は1室15,000円、稼働率は70%、清掃費は8000円/回で平均滞在日数を4.5日/組として計算しています。宿泊客が退出したタイミングで客の実費負担で清掃を実施します。運用代行手数料は売上の8%です。
年間合計 | 月平均 | |
稼働率 | 70% | 70% |
宿泊組数 | 57 | 4.75 |
宿泊売上 | 3,802,500 | 316,875 |
清掃売上 | 450,800 | 37,567 |
売上総計(一室) | 4,253,300 | 354,442 |
売上総計(全室) | 17,013,200 | 1,417,767 |
Webサイト手数料 | 127,500 | 10,625 |
清掃費 | 450,800 | 37,567 |
光熱費 | 120,000 | 10,000 |
消耗品 | 36,000 | 3,000 |
インターネット | 48,000 | 4,000 |
運営代行手数料 | 340,000 | 28,333 |
経費合計(一室) | 1,122,300 | 93,525 |
経費合計(全室) | 4,489,200 | 374,100 |
利益(全室) | 12,524,000 | 1,043,667 |
こうしてみると簡易宿所の月間利益が約100万円程度を見越せそうです。
コインランドリー&簡易宿所の収益プラン
簡易宿所の売上シミュレーションに、コインランドリーを含めた全体の収支想定をまとめました。コインランドリーの経費率は売上の30%としています。税金やその他諸経費は月5万円、年間60万円のざっくり見積もりです。銀行融資は元利均等30年返済で、金利4%で設定したうえで切り上げて50万円/月と返済負担はあえて高めに設定しています。
分類 | 項目 | 年(万円) | 月(万円) | 備考欄 |
売上 | 簡易宿所 | 1,700 | 140 | 3人×4部屋、稼働率70% |
コインランドリー | 636 | 53 | 都市型ランドリー | |
合計 | 2,336 | 193 | ||
経費 | 簡易宿所 | 450 | 38 | |
コインランドリー | 190 | 16 | 売上30% | |
税金等その他経費 | 60 | 5 | 年間60万円 | |
合計 | 700 | 59 | ||
返済 | 融資返済額 | 600 | 50 | 1億円30年返済、金利4% |
利益 | 融資返済後利益 | 1,036 | 84 |
表面利回り 売上÷物件取得価格 | 23.4% |
実質利回り(売上-経費)÷物件取得価格 | 16.4% |
融資返済後利回り(売上-経費-融資返済額)÷物件取得価格) | 10.4% |
経験上、コインランドリーの売上はほぼ想定通りになるだろう、と想定していますが、簡易宿所の売上が果たして想定通りにいくか、がポイントになりそうです。
簡易宿所の稼働率は70%で計算していますが、稼働率が25%を割り込むと融資返済後利益が0円になり、オーナー持ち出しの暗黒領域に落ちていきます。
さて、こんな感じの事業計画書(実際はもっと細かいバージョン)を作成して、いざ銀行融資に乗り込んでみました。
不動産投資に対する銀行の塩対応
土地は駅徒歩5分以内で担保能力あり、コインランドリー1店舗目の実績もあるし、簡易宿所についても調べて精緻なシミュレーションをして、トータルの表面利回りが23%以上もある。これなら融資を通してくれるでしょ?とメインバンクに掛け合ってみましたが、答えはNO!
これもひとえに「カボチャの馬車」から派生した不動産投資に対する金融引き締めの影響だと思われます。メインバンクの融資担当者曰く、以前はこのくらいの案件であれば支店長決済で通せたものが、現在はすべて本店の審査を経ないといけなくなったそうです。その肝心の本店審査も基本的には、手持ち資金をかなり入れないとダメみたい。今回の場合は3000万円くらいは必要だとのこと。
手持ち資金や他の資産を多く持っている高属性の資産家以外は、もはや銀行からのフルローンでの不動産投資の道は絶たれた、と言えそうです。
試しに他の地方銀行もいくつも当たってみましたが、結果はすべてNOでした。
物件に担保能力があり、事業の見通しが立っていて、既にコインランドリー1店舗目で実績が出ていて、サラリーマンとしての収入もあるんだから、貸してくれてもいいのに…。
「信用創造をして経済を活性化させるのが、金融機関の存在意義でしょ?」と息巻いてみても、しょせんは十分な手持ち資産のない貧乏投資家の無駄吠えでしかありません。
色々考えての事業計画ではありましたが、資金調達ができなければ絵にかいた餅です。無念の撤退です…。
ちなみに、その後しばらくしたらこの土地には普通の木造の建売住宅ができて、買い手がついたようです。ただ、一戸建てにするには、土地の形がいびつで庭もなく、道路からの騒音がうるさいので、住みやすいとはいえないのでは?と感じてしまうのですが、他人様の夢のマイホームに難癖をつけるのも無粋なのでこの辺でやめておきます。
うーん、それにしても悔しい。これにめげずに候補地を引き続き探します!
追記:新型コロナの影響で、訪日外国人旅行客の需要が消え去りました。この案件を進めていたら簡易宿所の稼働率は危険レベルの25%を切っていたと思われます。日本人の需要も見込める場所ではありますが、どちらにしても当時の想定よりはかなり収益性が悪化していたことでしょう。融資がつかずに救われた、ということか…。人間万事、塞翁が馬ですね…。
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