第4回国際コインランドリーExpo 2019 2日目に行ってきました!
前回の記事に引き続き、第4回国際コインランドリーEXPOのレポートの第3回をお届けします。
セミナー報告
“稼ぐ”コインランドリー事業 最強モデルの全貌!!
「ブルースカイランドリー」を展開している株式会社ジーアイビーさんのセッションです。このフランチャイズの特徴は、地方のショッピングモールの駐車場の一角に出店して、既に車で来ている買い物客を呼び込んでしまおうという「コバンザメ戦略」を徹底して実行していること。既に見込み客である30~50代の主婦がわんさかいる場所だし、広い駐車場も完備されているんだから、誰も来なくて閑古鳥がなく、というリスクを下げることができます。
しかも混雑する午前中には、パートさんが店内にいてサポートしてくれるという時間限定の有人店舗になっています。これは失敗する方が難しいくらいの良くできたモデル、もはや隙なしです。
代表の鈴木さんの見解としては、コインランドリー業界の市場規模は1500億円だが、利用率はわずか5%程度とのこと。ターゲットとなる3000万人の女性客のうち、80%がまだ利用していないという、成長の途中であり、最終的にはコインランドリー店は4万店くらいまでいくだろう、との事でした。これはお世話になっているコールセンター営業マンの予想とも一致します(記事:コインランドリー機器メーカーの雄、TOSEIの攻めの姿勢が明らかに!)
供給が需要を作る
セミナーの中で、興味深いキーワードがありました。それが「供給が需要を作る」という言葉です。
例え話で出ていたのは、自動販売機で販売する水やお茶の事例。ひと昔前であれば水や緑茶をお金を出して買うなんてあり得ない事でした。実際に、伊藤園が自動販売機でペットボトルの緑茶を売り出した時には、自宅でタダで飲めるお茶を誰が買うんだ、そんなものうまく行くわけがない、と揶揄されたそう。しかし、現在ではこのペットボトルのお茶や水だけで、4800億円の市場になっているそうです。身近な自動販売機に緑茶や水を供給して、甘くない健康によい水分補給という需要を作り出したのです。
自宅でタダで洗濯できて、天日干しすればタダで乾くのに、なんでお金払ってわざわざコインランドリーまで行って洗濯乾燥するの?あり得ないでしょ?というのが世の中の大部分のご意見。しかし、大量の洗濯モノを一気に洗える、除菌やダニ退治ができるという機能性、そして天日干しなら数時間かかる乾燥がわずか20分で終わるという「時短の価値」を知れば、もう手放せなくなる実需要が生まれます。
コインランドリーは典型的なリピータービジネスです。一度固定客になってもらえば、その後も継続的に利用してくれます。だからこそ、最初の一定の固定客を獲得するまでの立ち上がり時期が我慢できるか、が運命の分かれ道になりますね。
近年、コインランドリー店舗数が急増していますが、業界全体からみれば、まずは供給を増やしている段階で、これから供給から需要が作られていく段階に移っていくと言えます。一方で、需要が増える前に、一時的に供給過多になる過渡期には、競争による店舗の淘汰も進むということでしょうね、なるほど、怖い怖い。
ショッピングモール併設の成功基準
コインランドリーターゲット層の30~50代の主婦が、食料品を買いに定期的に訪れるショッピングモール。来店し「まず洗濯機回して、その間に買い物を済ませる」という黄金パターンできてしまえば、確実なリピーター客になってくれるでしょう。
それではこの完璧に見える「コバンザメ戦略」には死角はないのでしょうか?いえ、セミナーでは併設店の出店基準が示されていました。それはやはり家賃!
テナントとなるショッピングモールオーナーとの家賃交渉をしますが、高すぎる場合には採算が取れないので潔く出店を見送るそうです。全国にショッピングモールはあまたに存在しますが、その中で交渉がまとまり出店できるのはわずか3-4%のみ、そして出店がGoできる家賃相場は15~18万円程度とのことでした。
集客力抜群の立地で、駐車場の一角を潰した上に、他の広い駐車場を使いたい放題という条件では、なかなかの厳しい数字ではないでしょうか?地方の駐車場付きの潰れたコンビニの居抜き物件でも、この金額ではオーナーが渋ると思います、その店舗からコンビニが撤退した時点で、借金を抱えていているケースも多いでしょうし…。
ショッピングモール側と「共存共栄」という絵が描けないと、この家賃では交渉成立しないだろうな、と思います。この交渉力こそがブルースカイさんの強みなのかもしれませんね。
コインランドリー投資が失敗する主な要因は、①立地がダメ、②設備投資しすぎ、③家賃が高い、④運営管理の不備、です。ブルースカイさんにとっては①は全く問題なし、②は店舗パッケージ化によりコスト削減済、③家賃は基準を超える額では契約しない、④は有人店舗と遠隔監視で標準化済、という徹底ぶり。
失敗するリスクを最小限に抑えた上で、投資家にとっては税理士法人の強みを活かした節税や相続対策にもなっているという理想的な出店モデルだと思います。
対岸の火事ではなかった!?
ブルースカイランドリーは、「ショッピングモール併設モデル」で規模を拡大し勢力を伸してきています。「オーナーは金さえだせば後は全部やっておきます」という投資モデルなので、これからも資産家から資金を集めて成長していくだろうと、と予想しています。っていうか余剰資金があれば一気に多店舗オーナーになれるんだから、金持ちが更に金持ちになっていく構図ですね、正直うらやましい。
ただ、弱小ランドリー経営者の僕は、ブルースカイには怯えてませんでした。なぜなら、自宅の近所に「大型駐車場のあるショッピングモール」が存在しないから!関係ないもんねー。
…しかし、それもこのニュースを見るまででした。
ジーアイビー、東京23区内コインランドリー初出店!『ブルースカイランドリー蒲田本町店』が東京都大田区に2019年10月4日(金)にオープン
うおぉーい!ショッピングモール併設特化じゃなかったんかーい!84店舗目は23区内、しかも、ファミマに併設って!
出展:店舗情報:ブルースカイランドリー 蒲田本町店
近隣のライバル店の状況はこんな感じ。もっとも近い店舗とは直線距離で400mほどです。うまくコインランドリー空白地帯に飛び込んでいますね。
幹線道路と京浜東北線の線路に囲まれている独立しているエリアで、蒲田駅に向かう導線上、しかも食品スーパーであるマルエツの通りを挟んだ向かい側です。さらにファミマに併設…。さぁ、ついにブルースカイが都市型コインランドリーにも参入してきました。対岸の火事ではなかった。明日は我が身か、恐ろしい…。
コインランドリーが失敗する要因に⑤を1つ加えておきます。
①立地がダメ、②設備投資しすぎ、③家賃が高い、④運営管理の不備、⑤競争環境の激化
コインランドリー投資は曲がり角か?
さて、第4回国際コインランドリーExpo 2019、9月19日のコインランドリーに関連するセミナーをご紹介してきました。競争が激化する中、どうやって差別化して競合店舗に勝っていくか、というテーマが増えている印象でした。また、例年派手な展示をしていた某フランチャイズチェーンが出店を取りやめるなど、コインランドリーのフランチャイズビジネスへの風向きが変わってきている模様です。
また、主催者から発表された来場者数にも大きな変化がありました。2017年から2018年で1.5倍以上になった来場者数が、2019年には-30%近く落ち込んでしまいました。延べ来場者数に至っては、2年前を下回ってしまっています。どうも個人投資家によるコインランドリー投資ブームに陰りが見えてきていると思われます。(出典:Expo公式ページ)
年度 | 来場登録者 | 延べ参加者 |
2017年(11/29-12/01) | 4,459人 | 10,644人 |
2018年 (09/12-09/14) | 6,952人(+56%) | 13,186人(+24%) |
2019年(09/18-09/20) | 5,096人(-27%) | 10,365人(-21%) |
4万店に向けて店舗数が増え、市場は拡大していく予想されている一方、個人投資家はコインランドリー投資に慎重になってきている模様です。これは成功事例だけではなく、悲惨な失敗談が徐々に世の中に漏れ聞こえてきたことも大きいでしょう。
さて、コインランドリー業界は、流通系大資本や、資産家からうまく資金を集めたブルースカイやWASHハウスなどのFC系列にこのまま占有されていくのでしょうか?弱小店舗オーナーとして、今後の業界の行く末を戦々恐々と見守っていきたいと思います。
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