第4回国際コインランドリーExpo 2019 2日目に行ってきました!
前回の記事に引き続き、第4回国際コインランドリーEXPOの9月19日(木)のセミナーレポートをお届けします。
セミナー報告
勝ち組店舗がやっている6つのコインランドリー経営
「成長が鈍化するコインランドリー業界。昨対ゼロ成長、またはマイナスとなっているお店も増える中…」という衝撃的な書き出しのワイズプラントさんのセミナーです。こちらの会社は、クリーニング工場の設備設計を手掛けており、これまでクリーニング併設店としてコインランドリー店舗の出店を支援されています。
日本では既に、衣料品は「買っては捨てる」というサイクルになってしまっていて、2015年時点でなんと30億着の衣類を破棄したそうです。一方で、以前はクリーニング屋に存在していたリペア技術を持った優れた職人が減っており、ちゃんとリペアすればもっと長く利用できていたブランド品も修理されずに破棄されているのが現状です。
そういう「メンテナンス難民」を救い、リユース文化を醸成するために、ワイズプラントさんは「しみ抜き修復士」の指導・育成を推進していると紹介されていました。講演を聞いていて衣類を扱うプロの矜持だな、と個人的には非常に感銘を受けました。なんでも使い捨てではなく、良いもの買ってそれを大事に長く使える世の中の方が持続可能性は高いと思うのです。
小資本コインランドリーの生き残り戦略
さて、いまだに世の中の8割の人はコインランドリーとは無縁の生活を送っているのが現状です。ただ、共働きの増加や職場のカジュアル化は、明らかにコインランドリー業界にはフォローの風になっています。一方、既にライバル店同士の競争も激しくなってきており、勝ち残る為には戦略と差別化が必要と繰り返し主張されていました。
コインランドリーは長期間やれば(逆にいえば営業を続けられれば)必ずプラスになる事業だそうで、生き残る為に徹底的な経費節約の努力が必要となります。その他にも示唆に富んだアドバイスがあったので、要約してご紹介します。
安さを売らない。企業として最もやってはいけない競争は価格競争です。ライバル店とドロ沼の価格競争になりお互いの体力をすり減らします。いずれ顧客もその価格が当たり前になり、デフレ状態が定着してしまいます。安さではなく利便性で差別化をすべきです。安さアピールの悪い例としては、店舗の外から見える場所に値段を掲示するのはやめた方がいいそうです。「この店は値段で勝負する店です」というアピールになり、店舗イメージを自ら貶めてしまうそうです。
リサーチと独自シミュレーション。FCや機器販売会社の提供するシミュレーション結果を鵜呑みにしてはいけません。売上予測を機器の稼働率を掛けて算出しているのを良く見かけますが、それは店舗の洗濯乾燥のキャパシティーを計算しているだけに過ぎません。実際の利用価格から客単価を求め、それを積み上げていく方がまだましなシミュレーションになります。なお、立地調査については、J-STATという便利な地図ツールの紹介がありました。
無料の地図分析ツール、J-STAT
J-STATは地図情報と政府統計情報を組み合わせて、エリア分析が可能なツールです。政府が運営しており完全に無料で利用できます!
例えば、ある地点からの徒歩〇分でいけるエリアを確認することができます。以下の図は新宿駅から徒歩30分で到達できるエリアを示しています。同心円ではなく道の形状などを考慮した実際の移動可能エリアです。また移動速度や所要時間(分)も詳細に指定できるので、自転車や車などあらゆる移動手段を検証することができます。
また、地図情報と国勢調査の結果などの統計データを組みあわせるとができます。選べるデータも総人口だけではなく、男女別、世帯人数別、年齢別などかなり細かい指定が可能です。以下の図は新宿駅周辺の住民人数を町別に表示した地図です。人口総数に応じて色分けされて表示されて判りやすいですね。
これがあれば、出店候補地の絞り込みが効率化でき、売上シミュレーション精度を上げられそうです。ウチは立地が先に決まっていたので、市区町村の統計情報や折り込みチラシ業者の情報を利用してシミュレーションしましたが、これから新規に出店地を探す人には必須のツールかもしれませんね。
また、人口が分かったらその周辺の住民の所得水準の調査も重要との事でした。コインランドリーを日常的に使ってもらうには、ある程度の所得水準に達している世帯が多い方が有望なのでしょう。また共働き世帯であれば、時間が有効活用するため、家事を時短したいという需要も見込めます。
その地域の所得水準は、近隣の不動産価格から推測すればいいそうです。結局のところ不動産価格は住民の収入レベルに相関します。つまり、その物件を購入できる収入がある人が購入して住んでいる、という事ですね。世帯収入は以下の計算式で大まかなですが推測できるそうです。
物件価格 ÷ 5 = 想定世帯収入
競合店がいる場合には、視察をして客の入りと客単価を調べて、その店の推定年商を試算します。その上で立地候補地でどのくらいの売上が見込めるか、自分の手でシミュレーションしてみるのが大切だ、との事です。これは僕も完全に同意です。
業者のシミュレーションを鵜呑みにして開業してしまい、想定通りの売上にならないからと文句を言っても後の祭りですから。出店判断と経営リスクは最後は自分が負うべきものですので、シミュレーションも自分で行って納得してから始めるべきです。
その他にも、お客さんに人が存在を感じてもらうために恥ずかしくても「店内の操作案内の動画では人物の顔を切らない」や、店内でイベントをする場合にもその後の集客につながるようなモノにすべきで単なる「カルチャースクール」にしない、など具体的なアドバイスがあり、発見の多い有意義なセッションでした。
過度なリスクを取らずに、経費を抑えた開業を
どんな商売でも、売上から経費を引いた残りが利益という大原則は変わりません。売上が大きくても経費も大きければ儲かりません。コインランドリーの様な息の長い商売では、ほんの少しの経費の差が、積み上げていけば大きな利益の差になります。
特に開業まもない初期の頃は、コインランドリーの存在が近所に十分に認知されておらず、驚くほど少ない売上になってしまう傾向があります。僕も開業当初はそうでした。この最初の厳しい時期をいかに生き残るか、が非常に重要です。
経費をカバーできない程のしょぼい売上の場合には、ローン返済の不足分をオーナーが手持ち資産から補填しなければなりません。いつまで続くか判らない損失補填をサラリーマンの給与や貯蓄から続けるのは、精神的にかなりの不安と負担になるのは間違いありません。
ですので、過度な初期投資はしない、できることは自分でやる、自前物件でやる(家賃負担を回避)が、成功への近道かな、と思います。僕が実践している「自宅兼コインランドリー」という形態は、その答えの1つだと考えています。
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