明かになったファミマランドリーの出店戦略!副業ランドリー経営者は戦慄する…(下)

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ファミマランドリー事業の戦略を考察する

前回の中編では、ファミマランドリー1号店と2号店の出店場所やライバル店の商圏を確認しました。すると驚いたことに、どちらも既存のコインランドリーライバル店が多い地域への出店だったことが判明。

杉並の2号店は430m先にライバル店。千葉の1号店は600m先に、ホームセンターの巨大駐車場に隣接した大型コインランドリーを含め、半径1km内に同規模のライバル店がなんと3軒もあったのです。

なぜファミマランドリーは、このような出店場所を1号店、2号店に選んだのか?この問いから、ファミマのコインランドリー事業の戦略を考察してみたいと思います。

コンビニ業界の課題

現在のコンビニチェーンの経営課題とは何でしょうか?それはセブンイレブンなどの同業他社のみではなく、ドラックストアなどの他業種との競争激化による客数の減少です。定価販売のコンビニに対して、ドラックストアは酒や日用品の低価格販売で集客して、ついでに高価格で利益率の高い調剤医薬品、OTC医薬品、化粧品を販売するというビジネスモデルで成長し、コンビニから客を奪い続けています。

一方、コンビニの客単価は、現在611円くらいで、こちらは微増しているそうです。セブンイレブンで700円以上購入すると「クジ」が引けるキャンペーンをよくやってますが、これはもう100円、もう1品買ってもらって客単価をあげてもらおう、という狙いなのですね。

ただ、客単価が微増しても、客数が減ってしまってはジリ貧です。コンビニ業界は、何としても客数を取り戻し、且つ、客単価を上げる努力を続けていかねばいけないのです。

さて、関東地方も梅雨入りですが、そんな天気が悪い日にはコンビニの来店数は落ちます。しかし、雨だとしてもお弁当は仕入れないといけないし、バイトにも来てもらわないといけない。コンビニ経営者にできることは、雨になりそうだったら、仕入れを調整してできるだけ食料品の破棄を抑える、高利益商品のビニール傘を売るなどのリアクティブ(受動的)な対応が限界でした。要は、これまで雨の客数減は、コンビニ自身ではどうしようもなかった、もうお天道様に祈るしかなかった訳ですね。

期待されるコインランドリーとの相乗効果

ここで流通ニュースの記事をもう一度、確認してみましょう。

新規事業開発本部の朝雄健一郎新規アライアンス事業部長は、1号店は、想定通りの売上となっており、コインランドリーの売上は1日あたり2万円から2万5000円程度で推移している。既存のファミリーマートでは、客数が1日あたり40人程度増えている(中略)1号店では、コインランドリーの洗濯が終了するまで、イートインスペースで待つお客がいたため、今回は、一体型タイプで出店した。ファミマカフェやファストフードの売上が伸びている。具体的な客単価への貢献は図りにくいが、着実に既存店舗の客数が増加している」と語る

ファミマランドリー平日よりも週末の利用が多い。一般的にコンビニは、雨が降ると客数が落ちるが、1号店では雨が降ると逆に客数が1.5倍に伸びているという。 

コンビニとコインランドリーの組み合わせることで、普通の日の客も+40人となり、雨の日に至っては本来が減っていたものが、逆に1.5倍の客数になると!コンビニの客数減という経営課題に対して、見事な解決策に見えます。

コインランドリー併設によって、ついにコンビニが雨の日の売上減を、自分の工夫で克服できる手段を手に入れた、といえるのです!

また、商圏半径500mという狭い範囲でのコンビニ同士の激しい競争に対して、コインランドリー併設によって、商圏を半径1~2kmに拡大することができます。これまでは近所のコンビニに行っていた人が、衣替えやダニ退治、日々の洗濯のついでに遠くてもファミマランドリーまで足を運ぶ、というケースが生まれます。

最近、コインランドリーにカフェを併設する店舗を見かけますが、併設する店舗としてはコンビニが最適・最強だと思います。なぜなら、コンビニにはカフェ、アイスやお菓子、弁当やファーストフード、宅急便送付や受取り、雑誌、銀行ATM、タバコ、お酒やつまみ、そしてイートインスペース、電源コンセント、無料Wi-Fi、そして清潔なトイレ、ゴミ箱、監視カメラ、冷暖房完備、そして24時間コンビニ店員がいる安心感などなど何でも揃っているから。

本来のコンビニのコンセプトそのものだが、とにかく便利な店、ですね。ファミマはこれにスポーツジムも併設しようとしてるんだから、そこまで行けば、冗談じゃなくもう住めるレベルですね。冷蔵庫、風呂、洗濯機その他モロモロが集約してある訳ですから。

見えてきたファミマの出店戦略

落ち続ける客数を増やし、雨の日には逆に増やし、商圏を広げてくれ、客単価をあげてくれるコインランドリー併設。本業のコンビニにとって非常にありがたい存在だといえる。そうなんです。極論を言ってしまえば、ファミマはコインランドリー事業では利益を上げる必要がないのです。

さすがに大赤字では困るけど、収支トントンならOK!それはコインランドリーの価格設定を見ても伺い知れる。中段の全自動洗濯乾燥機(17kg/10kg)の価格設定に注目!

機種洗濯&乾燥容量時間値段
大型16kg60分1300円
大型7kg40分1100円
中型10kg60分900円
中型4kg40分800円

4kgと10kgでは、2.5倍の量が洗濯乾燥できるのに、差額はたったの100円!?

7kg洗える大型の40分コースよりも、60分掛かるとはいえ10kg洗える中型の方が200円も安くなっちゃってるからね!(1100円-900円=200円)

コインランドリー経営者の感覚からすると、これは900円ではなく少なくても1000円が本来の値段だと思う。ちなみに乾燥機の値段は、8分100円と妥当なところ。安い店は10分100円だから。

価格はライバル店を参考に決めたらしいが、恐らくライバル店と同じちょっと安くしていると思われる。少なくても「コンビニ併設なんだから割高でも使うだろ?」という上から目線の価格設定ではない。

さらに記事はこう締めくくる。

現在、敷地内にコインランドリーを併設できる可能性がある店舗は、全店の30~40%と想定している。

ファミマの店舗数は、国内で約17,000店。その30~40%というと、なんと5100~6800店というとんでもない数字になる。

1号店、2号店とも駐車場付き店舗となったが、今後は、駐車場がない店舗での実験も検討している。

今回の記事のゴールは、ファミマのコインランドリー事業の出店戦略を考察することでしたが、その核心に迫る重要な言葉がでてきました。それは“実験”

そうなんです、1号店は郊外大型店(駐車場あり)、2号店は都市中型店(駐車場あり)で、あえてライバル店が多い場所で行った「実験」であり、そして次は、都市小型店(駐車場なし)での「実験」もほのめかしている…。当然、「実験」なので既にライバル店がいるエリアに飛び込んでくるだろう、あわわ、あわわ…。

ファミマランドリーは、18年度末までに50店、2019年度にまず300店を出店する計画とのこと。最初の日経の記事では、2018年100店、2019年度500店だったので、目標は若干の下方修正ですかね?

どちらにしてもこの300店の中で実験と検証を繰り返して、最終的には5000店以上のファミマランドリーを展開していく可能性もあるということ。資本力があるのでいくつか失敗しても痛くも痒くもない。むしろ失敗から学んだら、次の店にノウハウと機械を移設すればいいだけ。

大きな購買力で、コインランドリー機器も格安で仕入れている?

1店舗あたりの投資額は、店舗改装、洗濯機、乾燥機などの設備を含め約2000万円となっている。

機械だけではなく、店舗の改装部分を全部含めて約2000万円という。これは信じられないくらい安い。1号店はコンビニと同じくらいのサイズに見えるし、2号店は面積は小さいが、コンビニに連結させたりとそんなに簡単な工事ではない。ひとまずざっくりと試算してみた。

項目定価1号店2号店
マルチ端末(両替機)162万円1台1台
10kg洗濯機47万円2台2台
27kg/16kg洗濯乾燥機(大型)275万円2台0台
17kg/10kg洗濯乾燥機(中型)200万円2台2台
25kg乾燥機(大型)105万円2台0台
14kg乾燥機(中型2段式)145万円3台4台
スニーカー洗濯乾燥38.5万円1台1台
機械投資額1889.5万円1274.5万円
店舗投資額1500万円1000万円
合計3389.5万円2274.5万円

1号店、2号店の平均を取ってみると…。

機械投資額:1582万円
店舗投資額:1250万円
投資額合計:2782万円

店舗費用はこれでもまだ控え目で実際にはもっと掛かっている可能性が高い。それでも、出店費用が約2000万円になるとしたら理由はひとつしかない。機械が半値以下で手に入っている、ということだ。

ファミマランドリーは2年以内で100億円単位での投資案件であり、代理店を通さないアクア直販となり中間マージンもない。ファミマに対して、アクアがメーカー希望小売価格よりも大幅な値引きをしている可能性は高いと思う。そもそも東南アジアを中心とした海外展開も視野に入れており、そこには莫大な新市場がある。目先の利益などそもそも求めていないのだろう。

コインランドリー併設のフランチャイズ契約も検討中

ファミマランドリーを併設することによる加盟店の負担は現在はないが、今後、ファミマランドリーを併設した場合の契約体系についても検討したいという。

ファミマランドリーは、本部直営で行うのでFC店はその恩恵にあずかれますよ。でも将来的にはランドリーのアシストの分だけ、コンビニのロイヤリティは割増にしますよ、という事か。割増分のロイヤリティが入ってくるのであれば、ますますコインランドリー単体では儲けなくてもよくなる。ファミマとしては、ドラックストアから客を取り戻し、本業のコンビニの業績が上向けば良いのだ。

近隣のコインランドリーライバル店は、その売上だけで経営をしていかねばならないのに対して、ファミマランドリーは、ランドリー自体は収支トントンでも全く問題がない。コンビニ本業の売上増と、割増ロイアリティが入ってくる。しかもスタート時点で、コインランドリー機械も格安で手に入っているコスト優位性もある。利益がなくてもOKとは書いたが、実際にはファミマランドリーはライバル店から客を奪いつつ、コインランドリーを使っていなかった新規顧客を獲得して儲かるだろう。当然、コンビニならではの割引クーポン発行や、Tポイントによるヘビーユーザー優遇などの施策も打ってくるとおもう。(大型洗濯乾燥を利用したらコーヒーかファミチキのどちらか1つ無料、とか)

結論:近くに来ないでください!

そろそろ言いたくない結論を言わねばいけません。

個人経営の小~中規模のコインランドリーは資本力、そしてビジネスモデルとしても、ガチンコ勝負では全く太刀打ちできません。

これに対抗するには、とにもかくにも商圏に密着する立地清潔さ。あとは洗濯代行や会員制、女性限定などの高付加価値化でしょうか。ただこのアプローチは固定費が上がるので、高価格でも成立するエリアである必要があり、資本力も必要。もはや副業ではできないレベルのものですね…。弱小な既存店の防衛・生き残り戦略については、また別の機会で考えてみようと思います。

副業コインランドリー経営者としては、ファミマにご近所で実験(荒ら)されないことを、祈るばかりですね…。

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コメント

コメント一覧 (4件)

    • ランドリープレス新潟さん
      改装店舗のページ、拝見しました、
      本格ROASTER併設!
      NOVO MARKⅡ、すごすぎ!
      コンビニ併設に対抗のポイントの1つは「本物志向」だと思っています。
      どうしたって「平均点」になるコンビニを超えた付加価値ですね。勉強になります。
      接客と清掃、この基本の徹底も、地味だけど重要なコンビニ対抗だと思ってます。
      頑張りましょう、コインランドリー経営!

  • こんにちはlaundromatさん

    上、中、下巻すべて読ませて頂きました。ロシアの諜報部員になれるレベルの資料の収集力と分析力ですね。以前から凄いと思ってましたがパワーアップして本気を出されたような凄いコインランドリーの大河ドラマのようでした。(笑)

    洗濯乾燥機の値段設定が出荷設定に比べて安い!
    これでは25%に光熱費が抑えられないですよね。コインランドリーで利益を求めるつもりがないコインランドリーが近くにできたら世紀末が来てしまいますね。メシアの降臨にすがるしか~トオホホ・・

    モリカケ問題、トランプロシア連疑惑も日本政府に諜報部員として入って解決してもらいたいぐらいの納得できる三部作でした。

    • マイケルさん
      ロシアの諜報部員になってしまうと幸せな老後は送れそうもないので、謹んで辞退したい(笑)ですが、今回の3部作、読んで頂いて嬉しいです!
      この一週間、コンビニとコインランドリーについて色々考えてみましたが、実はファミマランドリーにも弱点はあるかもな、と思い始めてます。
      メシアの降臨には頼らず、一緒にがんばりましょー。

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